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2009年05月01日

森 まゆみ 作家・編集者 経歴はこちら>>

わが子をよその子とくらべない(1/3)

 まだイギリスぼけが抜けない。ロンドンの電線のない美しい街区、ハイドパークはじめ町の中の広々した公園、ホントに空襲があったの? といいたくなる古い建物群、郊外に広がるグリーンベルトの緑地帯…。

 『元弁護士で悠々自適』(読売新聞4月10日夕刊)――ロンドン都心から40分の所に、1982年に広い庭付きの家を1400万円で買って、退職後も年金など1000万円の収入のある夫婦の記事が出ていた。

 在住40年の、私の知人によれば病院もタダ、美術館もタダ、プールもタダ、冬に高齢者には二百数十ポンドの暖房費が出るそうで、「それでワインを買うのが楽しみ。だって体を温めるんだから同じでしょ」とのことである。

 「イギリスでは…」と、向こうの良さばかりにため息をつく“出羽の守”といわれそうだが、おなじく経済にかげりを見せる先進国イギリスで、どうしてそんなことが可能なんだろう。日本政府は、高齢化社会で金がない、あれもこれもできない、とばかりいうが、それは無策にすぎないのでは。

○まだエリート主義をあおるのか

 日本に帰って新聞を見ると、いきなり東大合格高校ランキングの広告が目に入った。まだ、エリート主義をあおろうというのだろうか。それに教育に関する記事のなんと多いこと。外国の難関大学を出て、国際公務員として働いたり、起業したりしている若者の紹介記事もあるが、仕事の内容というより、成功談みたいに読める。

 このところ取材や相談に来る三十代、四十代のお母さんたちが、受験の話になると急に目の色が変わるのをみて、こわかった。私が子供だった頃から「教育ママ」というのがでてきたが、いまの比ではない。
 公立の学校は信用できない、どこの塾がいい、インターナショナル・スクールに入れたい、いっそアメリカの大学にはじめから行かせたい、MBAを取らせたい、いやパリの高等行政学院に…などと話は果てしなくエスカレートする。

 私は自分が中学受験をさせられたのがいやで、「子供時代を保障する」という信念をどこまで貫けるか心もとなかったのであるが、どうにか貫いて、わが子を塾にも行かせなかった。
 長女は芝居と音楽に、長男は野球に、二男は馬にのめり込んで、その結果、自分で自分のみちを見つけた。

  →次ページに続く(勉強嫌いな日本の大学生)

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