2008年09月22日
| 森信 茂樹 | 中央大学法科大学院教授 | 経歴はこちら>> |
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本日は自民党の総裁選挙である。10日に4候補者が正式に立候補してほぼ2週間、マスコミの話題を独占してきたが、総選挙が近い中、民主党にとってこのような事態は、苦々しいものであろう。
さて、各紙とも5人の公約を景気と財政への対応を縦軸・横軸にとって区分する紙面作りが多かったが、経済・財政政策については、2011年度プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化をどこまで守るのかという違いがある程度で、消費税については、「来年度は上げないが、将来的には引き上げる」という共通認識が見てとれた。このような自民党総裁としての公約が、直後に予定される総選挙の公約とどう関連するのか。国民の判断はこれからだ。
候補者の論戦の中で、胡散臭いのは、「上げ潮派」の主張する「埋蔵金」の活用である。「埋蔵金」とは、特別会計に積み立てられている準備金をさすようだが、これを一般会計に持って行って使うことにより財源不足問題が解決されるという考え方の妥当性、信憑性を各紙はきちんと検証すべきではないか。
そもそも積み立てはどの程度過剰なのか、外為特会に、経済変動への対処として積み立ててある「過剰」部分を、激動する国際経済の今日に取り崩すことに問題はないのか、仮に過剰な積み立てがあったとしても、それは莫大な国の借金を返すべき性格のもので、年金とか景気対策に使ってしまっていいのだろうか。ここらあたりの検証は各紙ともきわめて不十分だ。
○ばらまきの検証
前回のこの欄(8月28日、「ばらまき予算」防止のススメ)で、「経済対策がばらまきかどうか、マスコミは赤字国債の発行の有無によって判断しようとしているが、それは間違いで、建設国債の発行によって無駄な公共事業がつみあがり借金地獄になった事実を無視している」と書いた。
案の定、経済対策の財源の一部は建設国債の発行によって行われるようだ。補正予算の財源は予算の振替えで行うべきで、国債発行そのものに歯止めをかける論陣が張れなかったものか。
また、今回の景気対策が、ばらまきであるかどうかの事後検証も必要だ。マスコミは、物事が決まるまでは批判的見解を展開するものの、決定した後は興味を失いなんら検証がない。もっともこれは霞が関も同じだが。
○総裁選の争点―道路特定財源の一般化と成長戦略
総裁選の争点にならない不思議な点は、次の2つである。
ひとつは、道路特定財源の一般財源化の具体案である。プライマリーバランス黒字化の公約と社会保障財源の充足を両立させるには、道路特定財源から大幅な財源をねん出するしかないわけで、そのことについてどの程度やる気があるのか、問うべきではなかったか。
私は、8月7日付の本欄で、「福田内閣最大の試金石は、道路特定財源の一般財源化」として、この具体的プロセスを報道すべきだと主張したが、朝日新聞は、丹念にこれをフォローしている(9月12日付7面)。この問題は、我が国の岩盤である意思決定プロセスそのものであるだけに、今後とも詳しく報じて欲しいものだ。
もうひとつは、誰も具体的な成長戦略を語らないということである。農地改革、空港の自由化、1500兆円の金融資産の活性化、原油高や地価低迷などに伴う新たな価格体系の下での経済構造調整、地方分権等々の具体案は全く語られていない。誰に遠慮しているのだろうか。自らこの国のリーダーになるという自覚と勉強が不足しているせいだろうか。
→次回の新聞案内人は島脩さん。24日の掲載です。