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新聞案内人

2008年08月07日

森信 茂樹 中央大学法科大学院教授 経歴はこちら>>

福田内閣最大の試金石は「道路特定財源の一般財源化」

 今月から新聞案内人になった。私は、30数年間霞ヶ関勤務をしてきたこともあり、新聞記事を検証し自らの見解を公表するということは、これまで考えられなかった。それだけに、自らの経験に基づいた新聞の読み比べや記事の検証をできることは、緊張感とともに楽しみでもある。

 速報性に優れたテレビやインターネットに伍して新聞が生き延びていく道はどこにあるのか。新聞は、さまざまなニュースを新聞記者という媒介を通して、一般読者や専門家に、「下ごしらえをして」提供するところに付加価値がある。汗まみれになって獲得した情報をもとに記事を書く記者は、必ずしも専門家ではないが、磨き上げたセンスと動物的な感覚によって切り取られた事象を記事にし、受け手は、それに基づいて専門的な分析を始める。私の机も日々の新聞記事で埋まっている。優れた料理を作るには、「下ごしらえした」優れた材料が不可欠だ。

○年金財源は「埋蔵金」からねん出か

 さて、福田改造内閣が誕生したが、この政権の来年度予算の焦点は2つ。1つは、公的年金国庫負担の引き上げとそれに伴う財源(2.3兆円)の確保、もう1つは、道路特定財源の一般財源化である。早々と来年度からの消費税引き上げをあきらめたようなので、年金財源は「埋蔵金」をねん出することになりそうだ。埋蔵金とは、特別会計に積み立てられている剰余金を言うようだが、これを一般会計に移して使うだけでは、大したメリットはない。ことの本質は、各省が既得権化している特別会計の改革にある、という原点に戻った分析が今後期待される。

 私が最も注目したいのは、後者の、道路特定財源の一般財源化の問題である。内閣改造翌日(8月2日)の各社の社説を見ると、

読売 「年末の予算編成では、道路特定財源の一般財源化の具体案をまとめねばならない。自民党道路族との調整はこれからだ。」
日経 「肝心の道路特定財源の一般財源化の具体策や基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げる財源については不透明なままである。有権者が納得する明確な結論を出してほしい。」
朝日 「首相は消費増税について『2、3年の長い範囲で考える』と語ってきた。これでは単なる先送りである。年金や社会福祉などの財源をどのように工面していくか、しっかりした行程表を示してもらわねば困る。」

となっている。

○小泉内閣もできなかった構造改革

 私は、この問題は、福田総理の改革志向を占う唯一最大のポイントだと考えている。7月の骨太方針08(閣議決定)で一般財源化を明記し、それを受けての予算概算要求シーリングは、公共事業費などを従来より2%多く削減するなどして約3300億円をねん出し、「別枠」で医療などの重要政策に振り向けることを盛り込んだ。今後は、8月末の各省の予算要求の提出、それを受けての予算編成と続いていく。

 一連のプロセスの中で、道路特定財源(国・地方5.4兆円)の一般財源化というコミットメントがどう実行に移され、結果として昨年の一般財源化1,900億円とどう異なる予算編成になるのか。政・官・業のスクラムは、我が国の政治の岩盤であるが、これを突き崩すような予算編成ができれば、小泉内閣もできなかった構造改革ができたことになる。わが国の意思決定メカニズムや構造改革を占う最大のポイントであり同時に試金石でもある予算決定プロセスを、新聞は丹念に、そして刻々と報道してほしい。

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