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2009年02月06日

田中 早苗 弁護士 経歴はこちら>>

「死刑」と「無期」の間の議論(1/2)

 今年5月21日、スタートする「裁判員制度」。前回、この欄で、裁判員制度が始まれば、死刑制度について本格的な論議が始まるであろうと書いた。

 毎日新聞が実施した全国世論調査で、裁判員制度について聞いたところ、市民が死刑判決にかかわることに63%の人が「反対」と回答し、「賛成」は28%にとどまった(1月28日付け)。多くの市民が、自ら死刑の言い渡しをすることに躊躇(ちゅうちょ)していることが伺える。

 私の意見に、読者の方から、死刑を廃止する代わりに仮釈放のない無期懲役刑(終身刑)を創設すべきとの議論があったのではないか、との投稿をいただいた。確かに、そういう議論が行われており、いままでもかなり報道されてきているので、前回は、死刑論議で報道されていない点をあえて取り上げさせていただいた。

 終身刑について考えてみたい。朝日新聞の定期国民意識調査では、死刑存置派が81%あったものの、「一生、釈放を認めない終身刑ができた場合」と仮定して死刑存廃について尋ねると、「存続させたほうがよい」が62%、「廃止したほうがよい」は30%だった。単純に死刑存廃を聞いた場合の死刑存続派でも、終身刑導入を前提としたこの質問には、21%が「死刑廃止」に答えを変えていた(1月9日付け)。

 また、08年8月、量刑制度を考える超党派の会が、死刑と無期刑の間に終身刑の創設を求めており、そのことも報じられている。この議論は、無期懲役が14、5年で仮釈放が認められていて、死刑との差が大きいので、終身刑を創設すべきという前提にたっている。

○「無期化」すすみ平均在所31年10か月

 しかし、あまり報じられていないが、日本の無期懲役刑は「無期化」している。2007年末の無期受刑者は1670名。そのうち仮釈放されたのは06年で3名、07年で1名。いずれも20年超の在所期間があり、07年の平均在所期間は31年10か月だった。ここ最近10年間で、刑務所で死亡した無期受刑者は120人である(日弁連ホームページによる)。

 法務省矯正局の方に聞いたところ、無期懲役刑の「無期化」により、刑務所内での処遇が困難になってきているという。

 突然暴れまわるなどの「拘禁ノイローゼ」になるそうである。罹患率をみると、一般受刑者の0.16%に対して、死刑確定者は36%、無期受刑者は41%と高率である。また、無期囚の特徴の一つに、「刑務所ぼけ」の「おとなしい囚人」といった印象があるという。

 人間としての自由な精神の動きを失い、無感動になる、衣食住の一切が個人の意思とは無関係に外から与えられ、囚人は子供になりきることで「退行」する(大越義久『刑罰論序説』有斐閣)。拘禁ノイローゼや刑務所ぼけ。いずれにしても「絶望」は受刑者から人間らしさを奪う。

  →次ページに続く

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