2008年11月06日
| 田中 早苗 | 弁護士 | 経歴はこちら>> |
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アメリカは、バラク・オバマを大統領に選んだ。2004年7月の民主党大会。それまで全国的には無名だった彼を一躍注目の人物とさせた演説がある。
「私の父はケニアからの留学生、母はカンザス生まれ。両親は困難の多い愛を貫き、この国が与える可能性を信じました。私の人生はアメリカの壮大な物語の一部であり、私は先人たちに借りがあります」
「私は言いたい。リベラルのアメリカも、保守のアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だ。黒人、白人のアメリカも、ヒスパニック系、アジア系のアメリカもない。あるのはひとつのアメリカだ」(4日NHK・BS「オバマ対マケイン前編」)
彼の誕生当時、アメリカの半数以上の州で、白人と黒人との結婚が認められていなかったという。
ハワイ、インドネシアで子供時代を過ごし、カリフォルニア、ニューヨーク、シカゴなどに移り住み、多様な文化を肌で感じている。
白人社会から人種差別を味わい、黒人社会からも「本物の黒人か」「白人の顔をした黒人」などと言われ、2000年連邦下院議員選で現職のアフリカ系B・ラッシュ下院議員に敗退している。
政治的な、人種的な分断を乗り越えようと呼びかける声に皆が信をおくのは、彼の発言がこういった経験に裏打ちされているからであろう。
ひるがえって日本をみると、ブラジルに生まれ、レバノン、フランス、アメリカ、日本と拠点を移してきた日産のカルロス・ゴーン社長も多文化経験をもつ。
インタビューで、社内で女性の登用を進めようとしている理由を問われ、ゴーン氏はこう答える。「会社にとって必要だからです。女性や外国人、中途入社の人など多様な人がいるという意味の『ダイバーシティー(diversity)』は競争優位の手段です」
「国内で販売される車の3分の2は女性が車選びにかかわっているんですよ。男性名義でも妻や恋人の意見を聞くんです。また、当社の顧客調査では女性の8割、男性の5割が営業担当は女性がいいと答えました。そう考えると、営業担当の過半数は女性がよいのですが、現実は10%にも満たないのではないでしょうか」
「ルノーが買収したルーマニアの工場は管理職の半数が女性で、品質も生産性もきわめて高い。そこで、『女性は管理職に向かない』などと考える男性社員をそこに視察に送るんです。彼らが現実を知り、固定概念を一掃することが大事なんです」(8月23日・朝日新聞土曜版「be」・ゴーン道場)
仮に、ゴーン氏に女性は劣っているという偏見があれば、そもそも営業担当に女性がよいかというアンケートを実施しようとは考え付かないであろう。差別や偏見が視野を狭め、的確な判断をゆがめることにつながるのだ。
さらに、ゴーン氏は、多様性の尊重が「革新」を生むという。
フランスの大手自動車製造会社ルノーと日産が資本提携し、彼は「確かに日仏の違いは大きい」と言いながらも、「フランス人は概念化が速くて明確だが、実行に時間をかける。日本人は概念化に手間取り、フランス人だったら髪をかきむしっていらだつところだが、実行段階では迅速、効率的だ。そんな違いを的確に把握しつつ、文化的相違は『革新』をもたらす」と述べている(03年1月23日・朝日新聞「天声人語」)。
オバマ次期大統領も「分断を乗り越えなければ変革(CHANGE)はない」と呼びかける。
人種のるつぼのアメリカ。多様な価値観、文化の相違を尊重すれば、アメリカの復活は間違いないだろう。
→あす(7日)の新聞案内人は、中央大教授の森信茂樹さんです。