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2008年09月19日

田中 早苗 弁護士 経歴はこちら>>

「米金融危機」わからないことだらけ

 金融・経済が苦手だ。わからないから疑問が次々湧いてきた。どうして、リーマン・ブラザーズが破綻し、米連邦準備制度理事会(FRB)がAIGにつなぎ融資を実施して救済することになったのか。各紙記事に「答え」を探してみた。

 まず、リーマン・ブラザーズ。証券会社は近年、住宅ローンなどを購入、証券化して投資家に販売する手数料ビジネスで高収益をあげた。だが、担保となる住宅などの資産価格が下落。サブプライムローン関連商品などが売れ残り、証券会社は在庫を抱えたという(日経17日)。

 次にAIG。本業の生損保業務の利ざやが薄くなり、証券化商品の保証業務など多角化を進めた。保証業務は、証券化商品の元利保証。具体的にはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)というデリバティブ(金融派生商品)だ。ところが、サブプライム問題が深刻化し、格付け会社はAIG本体の格下げを実施。大きく格下げられると、契約相手に現金などの担保を差し入れなければならない契約により、AIGは約150億ドルを払う事態に陥った(朝日18日)。そう説明されている。

 つまり、サブプラム問題が原因ということか。ならば、なぜプライム(優良顧客向け)でなくサブプライムという信用度の低いローンも対象にしたのか。

 これについては、金融と情報技術を組み合わせた金融工学を駆使して、「リスクが分散された」とされ、デリバティブ(金融派生商品)に生まれ変わった(読売17日)、との記事がある。

 そうはいっても、もともとは住宅ローン。不動産価格が上がり続けるという「不動産神話」はありえない。かつての日本で実証済みだ。

 デリバティブには、極めて複雑な数学的・統計的手法が使われているため、金融のプロであってもなかなか本質を理解できない。格付け会社は商品を評価するすべがなく、甘い格付けに走った(読売17日)、からだという。

 こうなると、詐欺まがいといえないか。

 池尾和人慶応大学教授によると、そもそも、サブプライムローンのかなりの部分が略奪的貸付の側面をもっており、「不公正取引」といえるし、金融商品や取引の内容をいたずらに複雑化することで、リスクの過小評価をもたらすようなタイプの「不公正取引」もみられたという(日経「経済教室」18日)。

 どうして、不公正取引が増殖したのか。

 池田教授は、米国の金融サービス産業には、高収益実現が最も優先されるべき至上命令だったからだという。バンク・オブ・アメリカのCEOもリーマンの問題点を、「グリード(貪欲)」と言い切っている(日経「春秋」17日)。

 なんとばかな。「裸の王様だ」といった少年のように「おかしい」という者はいなかったのか。

 リーマンのファルド最高経営責任者(CEO)は「世界で最も尊敬されるCEO」(バロンズ誌)に選ばれ、リーマンも「最も賞賛に値する米証券会社」(フォーチュン誌)に輝いた。どちらも昨年の話である(産経17日)。

 それでは、政府やFRBは、何をしていたのか。

 バーナンキFRB議長(当時理事)は、2004年、米住宅公社2社が金融危機を引き起こす恐れに懸念を表明し、グリーンスパンFRB議長(当時)も公社の膨張を止める規制が必要と政府に再三訴えた。「しかし、強力なロビー活動でFRBの進言は受け入れなかった」(日経18日)。

 本当にどうかしている。

 今後、各紙が「なぜ」を報道してくれることに期待したい。

 →次回の新聞案内人は森信茂樹さん。22日の掲載です。

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