新聞案内人詳細

新聞案内人

2008年11月13日

水木 楊 作家、元日本経済新聞論説主幹 経歴はこちら>>

特ダネ記者の醍醐味とは

 みなさんの中で新聞を2紙以上お読みの方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。2紙以上、購読するのは経済的な負担が大きいと言われる方もおられるでしょう。会社で読む新聞もあるかもしれませんが、忙しいと丁寧には読めない。主婦の方は、2紙以上を読むには駅まで買いにいくなどしなければならない。

 1紙だけを読んでいると、掲載されている記事のどれが各社共通なのか、それとも独自物なのか、なかんずく特ダネなのかは分かりません。「それなら、この『あらたにす』を利用されるのも手です」と、あらたにすの編集者は言うかもしれませんが、あらたにすを見るにはパソコンの前に行かなければなりませんね。

 ところが、あなたが購読する新聞に掲載されている記事のうち、独自物がどれであるかを判別する簡単な方法があるのです。全部が全部ではありませんが、記事の最初の一節の語尾を見るのです。その会社が独自に調べて分析したことは、記事の語尾が「(…であることが)分かった」という表現になることが多い。

 最近の例を紹介しましょう。いずれも一面に登場した記事です。
 11月3日の朝日新聞は、「民主党の増子輝彦参院議員が、業務停止命令を受けているインターネット機器販売会社の監査役に就き、月20万円の報酬を得ていることが分かった」としています。この記事は朝日新聞の独自の取材によるものです。

 自社の調査ものにも、「分かった」が付くことが圧倒的に多い。ちょっと前になりますが、9月14日の日経。「役員の退職金を廃止した上場企業が約6割に上ることが分かった」という記事です。日経が東証1部上場企業を対象に調べた結果です。

○「分かった」と「明らかになった」の違い

 ところで、独自物の中には、記事の花である特ダネ(スクープとも言う)があります。この特ダネには、語尾が「明らかになった」で終わるケースがかなり多い。
 例えば、10月17日の読売新聞は、「新日本製鉄、JFEスチールなど日本の鉄鋼大手5社と伊藤忠商事の企業連合が、ブラジル鉄鋼大手CSNが同国内に保有する鉄鉱石の鉱山会社『ナミザ』に出資することで基本合意していたことが16日、明らかになった」と報道しています。

 全ての特ダネを含む独自物が「分かった」や「明らかになった」という語尾で終わるわけではありませんが、「分かった」や「明らかになった」で第一節の語尾が終わるケースは、大抵が独自物であると考えてよいでしょう。

○後追いしてもらってこそ真の特ダネ

 しかし、正確に言うなら、特ダネはその新聞だけに掲載されていたからといって、本当の特ダネになるわけではない。各社がその日の夕刊や次の日の朝刊などで後追いをして掲載したら、その時点で晴れて特種となります。

 さらに、その新聞だけの特ダネであるのに、朝のNHKのニュースで報道されたら、それはもう社長賞か、少なくとも編集局賞ものの特ダネということになりましょう。というのも、NHKは朝の新聞を見て、急いで朝駆け取材などをして確認したからです。

 各社は夕刊で追わざるをえなくなる。新聞記者は他社のスクープの後追い記事を書きたくない。けれども、渋々書く。そうやって他社に書かせる。それが特ダネを書いた記者の醍醐味なのです。

  →あす(14日)の新聞案内人は、コラムニストの歌田明弘さんです。

◆この記事をブログに

→「この記事をブログに」とは?


※このコラムへのご意見・感想を投稿ください

新聞案内人コラムへ投稿する
すべての投稿を掲載することはできませんのでご了承ください。詳しくは投稿規定をご確認ください。詳しくは投稿規定をご確認ください。※投稿画面が開かない場合はブラウザのCookieが有効になっているかご確認ください。


→新聞案内人コラムへの投稿一覧


水木 楊氏のコメント一覧

2010 3社論説トップ鼎談

ご購読のお申し込み

ブログパーツ