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2008年10月21日

水木 楊 作家、元日本経済新聞論説主幹 経歴はこちら>>

新聞の強みは「提言報道」

 10月16日の読売新聞は、一面トップで「医師を全国的に計画配置」の記事を掲げました。全国の医師不足を丹念に調査した結果、①若手医師を計画的に配置する②開業医も交代で病院を支え、患者のたらい回しを防ぐ③医療ミス防止に第三者的な調査機関を作る――などの提案をしたものです。

 翌日の記事では、麻生首相をはじめ、いろいろな反響があったと報道していましたが、記事の内容の是非については、医療の専門家ではないので、触れません。けれども、以前、朝日、読売、日経がそれぞれ年金制度について提案記事を掲げたときにも述べたことですが、新聞社がこのように自社の組織網を使って具体的な提案をすることは、大変結構なことではないかと考えます。

 ただ政策を批判するだけでは、官僚や政治家は少しも怖くはない。また外野が騒いでいる、くらいのことでしょう。あるいは、特定企業や機関が提案する場合は、その陰に自分達の利益を誘導しているのではないかという疑いもかけられましょう。

 では、テレビはどうか。NHKはNHKで予算を国会に認めてもらわなければならず、思いきったことは言い難い。民放はスポンサーの顔色を見なければならないし、提案を独自にまとめるほどの専門知識を蓄えてもいないのではないか。このような提案記事は、新聞社でしかできないことだと考えます。

 さて、今回申し上げたいのは、読売新聞がどうしてこのような専門的な領域にまで踏み込んだ提案記事をまとめることができたのかということです。それは、同社が編集局内に「医療情報部」という組織を設置して専門記者を育てているからです。その部のほかに、社会保障部という部もあります。

 それだけ、広義の社会保障、あるいは福祉が大切になると判断したからでしょう。医療情報部の前身である「医療情報室」が生まれたのはおよそ10年前の1997年で、翌年に社会保障部が設置されたとのことです。

 新聞社というところは時代の先端を行くようでいて、結構保守的なところがあり、政治部、経済部、社会部、運動部、整理部と10年1日のごとく同じ部を守っているような印象がありました。

 保守的な霞が関ですら大蔵省を財務省に、厚生省と労働省を合併したりしているのに、新聞社は一体どうなっているのだろうと思っていたのですが、ここ10年くらい、各社はそれぞれ工夫を始めたようで、これもまた大変結構なことであります。

○分かりやすさ、公正感覚忘れずに

 専門記者を育てる――それがいま新聞社に求められている最も大切なことのひとつです。テレビのワイド番組に出てくる、ド素人の、もっともそうな“熊さん八っさん”論議など聞きたくもない。そう思いませんか。

 専門記者こそが、きちんとしたバックグランドをもって、さまざまな不正や問題点をきちんと正すことができます。権力者を震えあがらせるような専門記者になってほしい。

 ただし、専門家とは異なり、誰にでも分かるようにやさしく記事を書くこと、専門バカにならないよう、取材先に取り込まれ同じ問題意識しか持てないようにならないよう、ジャーナリストらしい公正感覚を保持すること――これが良い専門記者の条件であることも、付け加えておきましょう。

  →あす(22日)の新聞案内人は歌田明弘さんです。

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