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2008年05月21日

水木 楊 作家、元日本経済新聞論説主幹 経歴はこちら>>

世論調査の“渦巻き”と有権者

 各紙が最近一斉に世論調査をして、福田政権の支持率を報道しました。多少のばらつきはあるものの、みな20%前半の数字が出ており、急落しているようです。おまけに、民主党への支持率が自民党のそれを初めて上回ったとのこと。世論調査上では、政権交代が実現した形です。

 このこと自体について、どうのこうの言うつもりはありません。「それみたことか」とも言いたくないし、「福田さんがちょっと可哀想」などと同情するつもりもありません。

 言いたいのは、読者のみなさんが報道機関の世論調査をどのように消化したらいいのかという問題です。というのも、報道機関の世論調査には、読者にとってメリットとデメリットとがあるからです。デメリットという言い方がおかしいなら、危険性と言ってもいいかもしれません。

 新聞社は社説や企画記事で、会社や記者個人の主張を展開しています。それは新聞社にとって大事なことです。また、事実を報道する客観的な記事でも、政府与党の問題点を摘発する記事がしばしば登場します。これもまた新聞の欠くことのできない重要な使命です。

 これらの記事は、当然のことながら、読者に影響力を及ぼすことでしょう。また、見過ごすことのできないのはテレビのワイド番組です。番組を作るディレクターほど熱心、丁寧、克明に新聞記事を読む人種はいないでしょう。中には新聞紙面そのものを番組で掲げてしまうところすらあります。そして、そのテレビもまた有権者に強大な影響力を及ぼしています。

 野球に例えるなら、報道機関は、投手という名の政府与党の投げる球を打つ打者のようなものです。ところが、世論調査は審判です。ここまで書けば懸命な読者はもうお分かりでしょう。報道機関の世論調査には、打者が審判を兼ねているような危険性があるのです。(本当は、アメリカにある「ギャラップ世論調査所」のような第三者的な機関が生まれるのが最も望ましいのですが、いますぐにというわけにもいきますまい)。

 そこで世論調査を回転軸にして、一種の連鎖運動が生じます。新聞やテレビなどの報道機関の批判→読者や視聴者の認識→世論調査における支持率の低下→報道機関の批判加速→視聴者の認識の深化……。

 何を言いたいかといえば、みなさんにこの連鎖運動の中に巻き込まれてしまわないでほしいということです。世論調査は世論調査、あくまでも参考にとどめ、自分なりの考え方、感じ方を持っていただきたいのです。でないと、みなさんは連鎖運動の渦巻きに浮かぶただの木の葉のようになってしまうでしょう。

 そんな次元の高い考え方でなくてもいいのです。首相の人柄が冷たそうだから嫌いとか、いや、あのクールな感じがたまらないとか、民主党代表はいつも仏頂面をしていて気に入らないとか、いや、大向こうにおもねることがなさそうだ、とかであっても一向に構わない。有権者が自分自身の物差しを失ったとたん、日本は世論調査という半ば自動的な渦巻きによって動く、お手軽で深みのない政治に支配されていくような気がしてなりません。

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