2008年03月19日
| 水木 楊 | 作家、元日本経済新聞論説主幹 | 経歴はこちら>> |
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3月末から、朝日、読売の両紙は活字を大きくすることになりました。これを新聞業界用語では「大字化」と呼びます。日経、朝日、読売の字の大きさを大字化前の現行で比較してみますと、日経を1とした場合、朝日は1.08、読売は1.30(面積比、小数点第3位で四捨五入)となります。大字化後は、その差はもっと開くことでしょう。
およそ、世の中で良い事ばかりなどありはしません。プラスがあれば、その反面、必ずマイナスもある。大字化もそのひとつです。
メリットの第一は、読みやすくなること。字数が少なくなるのだから、記事をより簡潔に書かなければならなくなり、明快になる(と期待できる)。デメリットは字数が減るのですから、情報量が少なくなること。
大字化するか、しないか――。経営者は相当の覚悟をもって、それぞれ決定したはずです。
これに関連して、実は、もうひとつ、みなさんにお教えしたいことがあります。それは3紙の記事の本数です。各紙ともページ数が日によって違いますし、紙面の性格もいろいろなので、一面をサンプルにして比較してみましょう。私が3月初めから2週間、調べた結果です。調査期間としては短すぎると言われるかもしれませんが、これまでの感じから見て、一般的傾向は大きくは違っていないと思われますので、お知らせします。
それによりますと、企画記事も含めた1日当たりの本数は、朝日が4.1本、読売4.7本、日経5.6本です。大ざっぱな感覚で言わせてもらうなら、他の面を含めても日経はその他2紙に比べ、圧倒的に本数が多いと言えるのではないでしょうか。これは毎日新聞や産経新聞に比較しても、そうでしょう。
記事の本数が多いからと言って、一概に情報量が多いとは断言できません。1本の記事にもたくさんの情報が含まれているケースもあるからです。しかし、これだけは、はっきり言えるのは、読者から見て、記事の少ない方がどれを読むかの選択肢が少なくということです。
実は、ここに3紙の編集についての考え方の違いが浮き彫りになっているような気がします。料理に例えるなら、日経の紙面は「ブュッフェ」、朝日、読売は「幕の内弁当」だということではないでしょうか。できるだけ料理をたくさん並べて読者に選ばせるのが「ブュッフェ」、中身の数は少ないが、料理の仕方で勝負するのが「幕の内弁当」。
幕の内弁当には大抵、海老やハンバーグ、鮭、などが入っていますが、どうしても芋の煮っころがしが食べたいという人は困ります。駅の売店で買おうにも、「煮っころがし」があるかどうか確かめなければならず、ブースのおばちゃんは“立ち読み”は許してくれないことでしょう。
これが幕の内の泣き所ですが、それを補う方法がひとつ出現したのです。それが電子メディアです。早い話が、この「あらたにす」です。これを覗(のぞ)いてみて、「煮っころがし」を探して読めばよろしい。詳しいことが知りたければ、ブースで買えばいい。
とはいうものの、電子メディアで、いちいち確かめるのは面倒という方もおられることでしょう。ここでも、メリット・デメリットの双方があるということです。
さて、読者のみなさんは、どちらを選ばれますか。懐にゆとりのある方は、「ブュッフェ」と「幕の内弁当」の両方をお買いになればよろしい。でも、2紙以上を買う併読率は、このところ減っているということも付け加えておきます。さあ、新聞社間の激烈な競争を、楽しんで眺めて参りましょう。