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2008年02月06日

水木 楊 作家、元日本経済新聞論説主幹 経歴はこちら>>

「ニュースの宝庫!」一面企画記事のつくられ方(2)

<(1)の続き>

 一面の編集は、企業や役所での予算要求に似ています。各部署から、われこそはという記事が大部屋の編集局に集まってきて売り込みが始まります。どの記事をどのような配置にするかについて、いわば第1次案を固めるのは、整理部という部署のデスク、あるいは部長ですが、彼らの心の底には、できるなら、採れたての活きの良いニュース記事で一面トップを飾りたいという心理が働くのではないでしょうか(実際に聞いてみなければわかりませんが)。

 だから、取材部門の記者たちは企画記事を押しのける特ダネを探して必死になります。元旦の一面トップを飾る特ダネを書いたとなれば、一生思い出に残るはずです。現役の記者だった頃の私も、デスクにハッパをかけられて、何かないかと走り回ったものです。結果は、一度も元旦一面トップの記事は書けず、代わりに読売新聞に銀行合併のニュースをスクープされ、正月から後追い取材に明け暮れした苦い思い出があります。

 今年も、締め切り時間が迫った真夜中、当番の整理部長(数人いる)は、編集局長のところに大刷りという紙面の雛形を持って行き、「これでいきますか」と尋ねたに違いありません。「そうしよう」と編集局長がうなずいて、最終決定が下されたのでしょう。 ニュース記事を書いた記者は、悔しさを噛み締め、企画記事を書いた人、あるいはグループは快哉を叫んだのではないでしょうか。大晦日の編集局の汗と涙を滲ませた、悲喜こもごもの光景が目に浮かぶようです。

 ところで、みなさんは企画記事の中にはニュースが含まれていないと思うかもしれませんが、それは違います。企画記事を書く記者たちは、中に盛り込む材料探しに躍起となります。どこかで一度書かれたりした、手垢のついた材料は用いたくないと考えるのが彼らの心情です。とりわけ新聞記者は、良い意味でも悪い意味でも山っ気が多く、負けずぎらいの人種が多い。ですから、企画記事の中には、意外な新事実が含まれていることがしばしばあるのです。

 新年の企画の中で面白かったのは、読売の、21日から始まった「水危機」でした。企画班は東京大学の沖大幹(だいかん)教授の研究グループとの共同で独自の調査をしました。日本、米国、中国、ケニアの家庭のある一日の食事に投入されているトータルの水の量を調べたのです。調理に使った水だけではなく、例えば牛肉の場合、牛1頭が生まれてから育つまでに使った水の量を「仮想水」というコンセプトで算定したのでした。その結果、牛丼1杯で何と風呂10杯分の水が使われたことになるとのことでした。

 これは、この共同グループが見出した新しい事実であり、ニュースとも言えるでしょう。この種の試みはどんどんやってもらいたいものです。

   私の友人に、広告関連のビジネスをしている人がいます。彼が言うには、「企画記事はニュースの宝庫」だそうです。仕事に役立つヒントは、企画記事にたくさん含まれているということでした。そんな目で、企画記事を読んでみるのも一案ではないでしょうか。

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