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2009年03月11日

安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 経歴はこちら>>

GMの危機と環境技術(1/2)

 オバマ政権にとって、いよいよ決断のときが迫っている。米ゼネラル・モーターズ(GM)の命運は、いまや米国政府の手中にあると言ってよい。  

 GMが破綻の危機に瀕している最大の原因は、短期的利益最優先の経営を行ったことであるが、そのために犠牲にされたのが、「次世代の自動車とは何か」という正しい技術ビジョンであった。まっとうな技術開発投資を行わない理由付けのために、わざわざ間違った未来ビジョンが描かれたように思える。それが燃料電池車であった。

 3月7日の日本経済新聞朝刊を見て驚いた。キャデラックの全面広告が4面連続で出ているではないか。いわば瀕死の企業が、これほど派手なことをやるのは、筆者には最後のあがきのようにさえ思えてしまう。

○燃料電池車の追求を続けるのか

 この広告で、GMアジア・パシフィック・ジャパンの社長ブラウン氏が、「より力強く生まれ変わるために、現実の目標を着実に達成していく」と述べている。環境技術については、「GMは以前から環境対応車の開発を進めています。シボレー・ボルトなどの電気自動車も重要ですが、GMが基本的に追求しているのはゼロエミッションです。その意味で今後も燃料電池車の開発に注力することになるでしょう」と語っている。

 筆者には、これを「現実の目標だ」と言うところに問題の根幹があるように思える。

 そもそも、燃料電池車はゼロエミッションなのだろうか。排気ガスとして水しか出さないが、排熱は出している。電気自動車は排気ガスとして水すら出さないし、排熱は出すが、その量は燃料電池車の5分の1程度だろう。どちらがゼロエミッションに近いのか。

 燃料電池車がエネルギー源とする水素はどうやって作るのか。現時点でもっとも現実性が高い方法が、天然ガスを原料として、炭素分はCO2にして排出し、水素を作る方法である。実のところ燃料電池車は、化石燃料による火力発電に依存する電気自動車と同程度の、あるいは、それよりも非ゼロエミッション車なのである。

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