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2008年07月07日

安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 経歴はこちら>>

いよいよ洞爺湖G8サミット

 この記事をお読みになるときには、すでにG8サミットが始まっているかもしれない。ここで何が決まるか、そして、日本が今後どのような方向性をもつことになるのか、7月8、9日の両日がその鍵となる瞬間である。いささか遅すぎるのではあるが、地球環境問題に関する事項について、現時点で心配なことを敢えて述べておきたい。

 まずは、ポスト京都に関しての中期削減目標についてである。現時点では、2009年12月のデンマークにおけるCOP15で決まるものと考えられている。この件は、地球益だけを考えて何かを言ったり、より格好の良い発言をする、といった動機で対応すべき課題ではない。国益を考慮しつつ、かつ、米国・カナダやインド・中国の動き、さらには、EUの意図を勘案しつつ慎重な対応が望まれるところである。「完全決裂」以外なら、どんな結果でもOKとすべきだろう。無理は禁物。

 一方、2050年に地球レベルでの温室効果ガスの半減を目指すCool Earth50に関しては、いかなる状況にあろうとも、安倍首相以来のこれまでの主張を変えることがあってはならない。一部に、合意が難しいという意見もあり、一方で、すでにこの方向で合意するという予測もあるが、この長期レベルの話は、各国が国益を考えて発言をするような問題ではなくて、地球の将来に関する思想・哲学を表明すべき問題だからである。

 日本としては、2050年までに温室効果ガスの60~80%を削減するというこれまでの主張を繰り返すことがもっとも重要なことだろう。それは、この対象が、環境分野において、日本という国のリーダーシップを示すことができる唯一の場面だからである。

 同時に、福田ビジョンの中で述べられた具体的な対応の実施に向けた動きを粛々と進めるとの意志の表明が重要だろう。福田ビジョンには、「日本のお家芸であった太陽光発電の普及率で、現在ドイツの後塵を拝しているが、太陽光発電世界一の座を奪還するため、導入量を2020年までに現状の10倍、30年には40倍に引き上げることを目標」、といった記述があった。簡単に実現できそうにも聞こえるが、実際には、かなりの困難が予想される。

 すなわち、その実現には科学技術の発展がまだまだ必要である。太陽光発電のような出力の揺らぎが激しい電力を格段に増加するには、なんらかの方法で電力の平準化をする必要がある。ドイツ並みの極めて強固な電力網を整備するのも一つの方法である。

 NEDOは青森県六ケ所村の風力発電に、NaS電池と呼ばれる二次電池を併設した事業を支援した。電力の揺らぎを抑えるために使われるNaS電池であるが、筆者が1975年から2年間、米国に留学した際に参画したプロジェクトがこのNaS電池に関するものであった。現状でもコストがまだまだ高く、すでに30年以上が経過しているにも関わらず、実用レベルになったとは言えない。原理が分かっていても、実用の材料の開発などには相当の時間がかかるのである。

 さらに時間がかかることが、社会全体の意識の変革である。ドイツなどでは、電力とガスの供給は同一の会社によって行われている。日本のように、電力会社とガス会社がオール電化を巡って足の引っ張り合いをやっているような状況は絶望的である。通常の電力供給網に加え、風力・太陽光発電とガスを使った燃料電池によるマイクログリッドで、自然エネルギーの増大と電力の平準化を同時に実現する、といった総合的なエネルギー供給体制を作ることが必須である。それには、総合エネルギー企業化が唯一の方向なのではないか。

 今回、洞爺湖サミットにおいて、そしてその後のフォローアップにおいて重要なことは、長期的な方向性を国際的に再確認して合意を得ると同時に、その実現のために、どのような科学技術が必要であり、日本はどのような貢献をするのか、さらに、日本という国では、どのような社会変革が必要であるかについて、海外向けだけでなく、日本国内向けにしっかりとアナウンスすることのように思える。果たしてどうなるだろうか。期待とともに、いささか不安でもある。

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