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2008年04月14日

安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 経歴はこちら>>

地球温暖化抑制策の革新的アイディアを

 4月5日、2013年以降の温暖化抑制策の枠組み、すなわち、「ポスト京都」を検討する国連の気候変動条約作業部会の会合がバンコクで閉幕したが、日本が提案したセクター別アプローチの評判は芳しくなかった。先進国からは一定程度の評価は得られているものの、NPOからは日本の姿勢は後ろ向きであるとの評価をされているし、途上国からは拒否反応が強い。

 6日の日経社説は、「代案を急げ」の見出しで、この件を取り上げている。また、各紙も記事として、危機的状況であることを報じている。

 「途上国は技術移転は歓迎するものの、削減義務の受け入れに繋がりかねないことに強く反発。作業部会でも賛否が入り乱れ、セクター別アプローチは5月の次回会合の主要テーマから外され、3回目の会合まで議論が先送りされた」

 温暖化抑制策を考えるとき基本とすべきことは、当然のことではあるが、まず、温室効果ガスの排出削減が実現できるかどうか、である。同時に、途上国の発展が十分に配慮されることが必須である。この基本的な2条件を組み込んだ主張になっていないことが、途上国からの反発を買っている原因だろう。日本のODAは5位になった。76億9100万ドルで前年比31.3%減である。これでは途上国に信用しろとは言っても無理である。

 セクター別アプローチは、排出削減の実現という面だけから言えば、単に排出権取引だけを行うよりも理論的に遥かに優れた方法になりうる。対象となる技術分野は途上国の経済発展に必須だからである。

 すべての途上国が21世紀の間に成長を完了することは、日本がその発展を戦後40年程度で実現したことを考えれば、無理なことではない。しかし、すべての国が、現在の欧米型の文明を実現するとなれば、21世紀中に600億トン程度の鉄と、その倍のセメントが必要となるだろう。セメントは安価なため、地域内での生産が現実的な方法である。各国が、日本が保有する技術の数倍も効率の悪い方法でセメントを生産し、温暖化を急速に加速する危惧がある。先進技術を移転して、途上国におけるセメント製造の効率を改善しなければならない。鉄は、効率の悪い小型溶鉱炉を使用して途上国で生産が行われる可能性があり、これも中国のこれまでの状況を見れば十分に予想できる事態である。

 すなわち、鉄・セメントあるいは製紙・石油精製といった技術分野別に、効率の高い方法を途上国に移転することが地球的見地から必要不可欠なのだ。セクター別アプローチは、これを推進する直接的な優れた方法である。

 もちろん、ポスト京都をどのような枠組みとするか、さまざまな議論が必要である。セクター別アプローチに、排出権取引と日本が世界に誇るトップランナー方式を組み合わせる、といった新規な枠組みが必要となるようにも思える。

 いずれにしても、途上国に信頼されて初めて、日本は国際社会に対して有効な貢献を行うことができる。今、途上国にどのようなメッセージを出すべきなのか。国連の作業部会で検討されていることは、確かに2013年以降のいわゆるポスト京都の枠組みではあるが、現時点の京都議定書の枠組み内での取り組みでも、途上国の信用を回復する革命的かつ大胆な方法がある。

 平成20年度の国家予算に、ロシアなどからの排出権購入を目論んだ予算が、220億円程度ではあるが、組み込まれている。ロシアの排出権を購入したところで、地球全体での排出量が削減される訳ではない。ロシアでのエネルギー消費が増えて、却って二酸化炭素の排出量が増える可能性すらある。

 そこで、来年度以降の予算編成では、CDM(途上国での削減)以外の方法による排出権の取得は日本の方針として止めることを宣言し、それに相当する予算枠は、途上国への技術移転にあてる。そのため不足する日本の排出削減量は、京都議定書の枠組みに従って、30%増しにして次の約束期間に送る。すなわち、「予算を途上国への技術移転に優先的に使用する。そのため京都議定書の達成は、第一約束期間内では不可能になるが、これが地球レベルで最良の方法である」との宣言を行うべきである。

 技術移転としては、現時点では、途上国における人材育成が良いだろう。これらの国では、将来、自国の環境政策に寄与できる人材、効率のよい生産装置や製品などの設計・建設ができる人材などを今から準備すべきだからである。

 ポスト京都の枠組みは単なる排出権取引導入だけでは不十分で、本当に有効で斬新なアイディアが必須である。メディアも単に政府の対応を批判するだけでなく、革新的なアイディアを生み出すことに積極的に協力すべきである。

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