選択と未来

「イギリス、どうなるのだろうね。」

昨日の朝、大学で友達と何気なく話していました。一国が出す答えを、世界中が固唾を飲んで見つめた日でした。

 

残留か。離脱か。英国国民はついに離脱という大きな決断を下しました。株価は大急落。その衝撃は予想を超えて世界市場に大きな動揺を与えました。1000社を超える企業がイギリスに進出している日本にも影響が波及しています。

 

今回争点になったのは、主に移民問題と主権です。離脱派は東欧からの移民が雇用を奪い、またEUが英国の主権を奪っていると訴えました。しかし、グローバル化で敗者となった高齢者や低所得層の不満が反EUや反移民に結びつき、感情的に離脱に向かわせたという見方もできます。英国の政治に欠けていたものは有権者と政治家との対話ではないでしょうか。二分した世論の溝を埋め、政治への不信感を拭うためにも、厳しい環境に身を置く市民の声に耳を傾け、寄り添いながら、社会に潜む不満や将来の不安を減らす努力が必要です。

 

フランスやギリシャでも4割が離脱派を支持するという世論調査があり、離脱ドミノが危惧されています。残留派支持の多いスコットランドや北アイルランドでの独立問題の再燃も現実味を帯びてきました。今、世界では、内向き志向が進んでいます。欧州だけではありません。経済成長が伸び悩み、格差が拡大する中国やアメリカでも同じ現象が起こっています。そこには市民の不満が自国主義や排外主義へとつながる危うさも存在します。

 

このような考え方が広がれば、テロや環境問題、難民問題など地球規模の課題に立ち向かうことができません。多くの先進国が試練の時期を迎える中で、こちらもまた、国と国との対話が必要ではないでしょうか。互いの立場や主張の違いを尊重しながらも、妥協点や不満を最小限にする政策を見出し、国際協調と共生の道を歩んでいかなくてはなりません。

 

EUの限界も浮き彫りになりました。欧州の統合は世界大戦の反省から恒久的な平和を目指し、70年間の歴史の中で発展してきました。人や資本の往来の自由化を進め、国境なき欧州を実現しています。けれどもエリート主義で、加盟国の権限を制約する政治手法は求心力を弱める結果を招いています。大国の離脱という厳しい現実が突き付けられた今、多くの人々に開かれた議論の場が必要なのではないでしょうか。

 

もう一つ筆者が注目した点があります。若者の投票率です。今回の国民投票では、高齢者は離脱、EUの英国で育った若者は残留を支持する人が多かったようです。実力伯仲の戦いとなりました。票差は全体のわずか約3.8パーセント。しかしこの小さな差が国の未来を大きく変えていくのです。若年層の投票率の低さが、若者の民意が反映されなかった要因ともいえるかもしれません。

 

日本にも通じることでしょう。先日、参議院選が公示されました。選挙権が18歳に引き下げられ、若者の有権者は新たに240万人も増えました。これからの国を担う私たち若者が、積極的に政治に参加して国を変えていくべきです。日本の未来に思いをはせ、どんな国を作っていくのかを想像すれば、選挙に参加することは難しいことではないと感じます。筆者も日本の未来像を考えながら、期待と希望を込めて一票を投じたいと思います。

 

25日付け 英「EU離脱」各紙関連面