学校の無線LANを、防災に生かす

 生徒から直接伝えられたらよかったのに、と今でも思います。高校の文化祭の後、「大雨で駅が浸水した。電車は動かない」と伝えられました。私を含め一部の生徒は学校に泊まることになったのですが、これがなかなか保護者に伝わりませんでした。先生が固定電話と教室をリレーのように往復していたのを覚えています。

 全国すべての小中学校・高校に、無線LANを配備する方針が固まりました。導入が検討されている「デジタル教科書」を後押しするものです。教科書自体のダウンロードが学校で行えるだけでなく、音声や動画を絡めた授業を展開することも容易になります。

 今回注目したいのは、無線LAN配備に「災害対策」という側面があることです。多くの学校は、地域の防衛拠点に指定されていて、災害時に多くの住民を受け入れられるようにできています。私が学校に泊まった時も、アルミホイルで包装された非常用の毛布が出てきて驚きました。集まった人々が自由にインターネットを使えれば、速やかな安否確認ができます。大きな災害の後は電話の回線が込み合い、連絡が滞ってきました。熊本地震では停電の影響で、大手携帯電話会社の基地局が止まり、繋がりにくい状態が数日間続いたといいます。学校の無線LANが無事なら、こうした場合のリスク回避になります。

 もっとも、生徒の間で共有される災害用のメーリングリストは、もうすでに普及しているように思います。ネックとなるのは、不特定多数の使用に耐えられるかどうかのようです。便利さの一方で、簡単に不正侵入されてしまう、校内全域をカバーするには実地試験や多額の費用が必要になるなど、懸念は残ります。

 とはいえ、災害時の連絡手段が重要なのは言うまでもありません。大雨の日、いつもは30分の道を、何時間もかかって迎えに来てくれる保護者もいました。心配と危険を減らすためにも、一刻も早い普及が待たれます。

参考記事:5月8日付 日本経済新聞社1面 『全小中学校に無線LAN 電子教科書に対応』

未分類