お得感で地方都市に住む?

「生き方を自由に選択できる時代になった」。最近、耳にすることが多くなったこのフレーズ。私は親のおかげか、平成に生まれたためか、やりたいことをさせてもらえる環境にいて、変化を実感できていませんが、こう感じている人もいらっしゃることでしょう。ライフワークバランスが謳われ、仕事と生活を選択できるようになった。男性も育児休暇をとれるようになり、女性が育児をするという常識が覆された。最近はこうした動きが見られます。今日は、住む場所の選択についての話題を取り上げます。

 

地方自治体ではU・Iターンを促す取り組みが積極的に行われています。最近では、地方都市と東京の生活費などを試算し地方の経済的なお得感や豊かさをアピールする地方自治体が増えているようです。そこで今日の読売新聞で取り上げられていたのが、私の故郷、福井県が打ち出した「福井暮らしライフデザイン設計書」です。一戸建ての住宅の購入費や教育費を比較すると60歳までの収支で約4600万円の黒字となり、東京を約3000万円上回る。福井は待機児童がゼロで育児中の有業率は72%と東京より22ポイントも高く、女性の正社員が多く、共働き世帯の夫婦の収入も東京と大差はない。そうしたデータを公開しました。

 

「地方は経済的に不利」といった先入観を取り払い、「住むなら福井」と若者に実感してほしいと県の担当者は語っています。さて、このような経済的な部分のアピールで若者を取り戻すことができるのか、疑問が残ります。確かに一つの指標にはなりますが、福井県出身でUターンを考えていない私からすると、このPRは物足りない印象を受けます。「何が生活を豊かにするのか」の答えは多様化しています。ですから、経済面だけではなく、できるだけ多くの魅力を発信していく必要があると思います。

 

私の場合、都会がチャレンジの環境、田舎は安定の環境といったイメージがぬぐいきれません。革新的なモノやアイデア、最前線で活躍する人たちが都会には集まる。地方から進学等で都会に出てきた人はその魅力を味わっています。大学で触れる様々な価値観、都会で見る景色、モノ、全てが新しく、気付けばそういう環境で次のステップに挑戦していきたいという考えが芽生えている。それが、県外に出た学生の25%しか福井に戻ってこないという結果を生んでいる一因ではないかと思います。

 

田舎は安定志向といった先入観を取り除かなくてはいけないのではないでしょうか。田舎だからこそ、若者の新たな価値観で見直せる部分はたくさんあるはず。お得感ではなく、「チャレンジできる環境」があるのだというアピールも積極的にしてほしいものです。

 

2月9日付け 読売新聞 大阪14版 社会面 34面 「地方生活おトクです

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