改正農協法成立 農家の自助努力がカギ

「農業には魅力がない」「働き手は皆東京に出てしまう」そんな話はすでに過去のものになりつつあります。28日、全国農業協同組合(JA全中)の組織改革を柱とする改正農協法が参院で可決され成立しました。2019年9月末までにJA全中を一般社団法人に転換、地域農協に対する監査権を廃止することで、各農協の経営の自由度を高めます。また農地を所有できる法人の条件なども緩和。企業などの農業参入がより容易になる見込みです。
日本の農業をめぐる環境を考えれば、納得できる法改正です。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の影響もさることながら、そもそもこれまで農業の成功例として称揚されてきたのは「上部組織から距離を置く農家や農協」でした。北海道・浜中町は、ハーゲンダッツ・アイスクリームに使用する牛乳を日本で唯一生産している町として有名です。JA浜中町は全国から酪農を志す若者を呼び込んで教育し、浜中町に定着させました。最新設備を導入するための金融まで浜中町が管理しています。北海道の酪農はほとんどがホクレン(ホクレン農業組合連合会)の影響下にありますが、そこから脱することが浜中町の成功の秘訣でした。
28日の改正農協法が描く農業像は、浜中町の例に近いものがあります。改正法には全中の監査権の停止と併せて、「地域農協の理事の過半数を意欲と能力の高い農家にすること」という規定が含まれています。つまりはただ全中の影響力を排すだけでなく、「意欲のある」地域農協と農家が共同して事業に取り組むということまで意図しているというわけです。
これからは地域農協が独自の農業像を描き、そのリーダーは、高い生産性を実現した農家や、意欲のある若手農家が務めることになります。浜中町のようなケースは、近い将来にも珍しいものではなくなるかもしれません。ただ一つの懸念点を挙げるとすれば、生産性の低い農家への「淘汰圧」が高まるということでしょうか。痛みに耐えられる地域とそうでない地域の間には、これまで以上に大きな格差が生まれることが予想されます。結局のところ、農家の自助努力は欠かせません。

8月29日付 読売新聞朝刊14版 11面『地域農協の自立促す 改正法成立』

未分類