突破口なるかベネッセ新事業

先月から「リクナビ」や「マイナビ」といった就職情報サイトが、17年卒の学生向けに次々とオープンしました。筆者も早速サイトに登録した学生の一人です。しかし毎日のように届くメールは正直鬱陶しいので、未開封のままの削除も少なくありません。『○○大学のアナタにオススメの企業!』といった件名のメールが来ても、「いやいや、私の大学には2万人以上の学生がいるのですが……」と冷めた目で見てしまいます。エントリーが簡単な反面、学生は自分に合った企業を見つけにくく、企業も大勢をふるいにかける手間が増えています。

「自分にはどんな企業が、あるいは仕事が向いているのだろう」。こうした疑問は就活生にはつきものでしょう。私も日々考えますが、答えがはっきりしません。やりたいことはあっても、それが自分に向いているかどうかは分からないからです。

ですが、私のような就活生を救ってくれるかもしれない動きがあります。ベネッセホールディングスは、10月から新卒学生向けの就職支援サービスを始めるそうです。学生との無料面談で志望や適性を把握し、企業が求める人物像と突き合わせて互いを紹介する。精度の高い「お見合い」の機会を提供し、内定すれば企業から報酬として80万円を得ます。この就職支援は求人サービス大手のインテリジェンスと4月に共同で設立したベネッセi-キャリアが担うそうです。今年の経団連の新ルールによる、就職活動の後ろ倒しで、選考期間が短縮されたことも背景にあります。効率的な就活や採用へのニーズが高まると見られています。また、ベネッセのこうした新しいビジネスは、これまで「進研ゼミ」に依存してきた同社の打開策とも言えるでしょう。

「経団連の新ルール」は、混乱だけではなく新しいビジネスをも生むのか。心のどこかで感心してしまうものの、やはり気になるのは「情報漏えい」です。ベネッセと言えば、昨年7月に発覚した情報流出が記憶に新しいところです。利用者の情報はきちんと守られるのでしょうか。もう一つ気になる点があります。もし内定をもらった学生がその企業を蹴って、他の内定企業を優先した場合です。「報酬」が発生しているので、就活生も内定を断りづらい……。それこそ、「おわハラ(就活終われハラスメント)」も増加するかもしれません。学生側の「職業選択の自由」を奪いかねないでしょう。

もちろん、セキュリティー面がきちんと保障されているのであれば、この就職支援サービスを利用したいと考える学生は多いでしょう。大切なのは「誰のための就職活動なのか」。学生はもちろん、就職支援をする側も深く考えることですね。

 

 

参考記事:

24日付 日本経済新聞(大阪14版)13面(企業・消費)「ベネッセが就職支援 今年から選考期間短縮 効率的に採用」